大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(行ナ)22号 判決

原告 坂本梶太郎

被告 特許庁長官

一、主  文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

二、事  実

一、請求の趣旨

原告訴訟代理人は、昭和二十七年抗告審判第三一六号事件について、特許庁が昭和二十八年六月二十九日にした審決を取り消す。訴訟費用は、被告の負担とするとの判決を求めると申し立てた。

二、請求の原因

原告訴訟代理人は、請求の原因として、次のように述べた。

一、原告は、昭和二十五年十一月二十四日、別紙記載のように「ニツカエヌケー」の片仮名を同一書体で、同じ程度の大さきに、左から横書にして構成せられている原告の商標について、第十八類理化学、医術、測定、写真、教育用の器械器具、眼鏡及び算数器の類並びにその各部を指定商品として、その登録を出願したところ、(昭和二十五年商標登録願第二六九八一号事件)拒絶査定を受けたので、昭和二十七年四月十一日抗告審判を請求したが、(昭和二十七年抗告審判第三一六号事件)特許庁は、昭和二十八年六月二十九日原告の抗告審判請求は成り立たないとの審決をなし、その謄本は、同年七月九日原告に送達せられた。

二、審決は、登録第二三九〇三五号商標を引用し、原告の右出願商標は、これと類似し、同一又は類似の商品に使用するから、商標法第二条第一項第九号の規定によつて、登録することができないものと判定したが、右引用にかゝる登録第二三九〇三五号商標は、別紙記載のように、「日華」の文字を縦書にして構成されており、第十八類感光膜、閃光粉その他本類に属する商品を指定商品として昭和七年十二月十九日登録、昭和二十八年一月十四日更新登録のなされたものである。

審決は、その理由として、原告の商標中「ニツカ」の片仮名の後に添加した「エヌケー」の片仮名は、氏名の略称として、または商品の品位、品質表示上の記号として、普通に慣用せられるローマ字のNKを想起せしめ、注意は、「ニツカ」の点に強く引かれるから、その部分が要部をなし、従つて原告の商標は、単に「ニツカ」印とも称呼せられ、称呼上、観念上彼此まぎれる虞があると説示している。

三、しかしながら審決は、次の理由で違法である。

(一)  原告の商標の構成は、先に述べたとおりであるから、これからは「ニツカエヌケー」と一連した称呼を生じ、七音で発音されるのに反し、引用商標は、「ニツカ」の三音で発音され、かつ、引用商標は「ニ」に音便が生ずるのに反し、原告の商標は、「ニ」「エ」「ケ」に音便が生ずる。また引用商標は短音なのに反し、原告の商標は長音であるから、両者から聴者の受ける印象は全く相違し、称呼上、観念上互にまぎれる虞はない。

(二)  原告の商標は、前述のように、「ニツカエヌケー」の文字を同一書体で、同一の大きさに一連に書いたものであるから、その構成する文字は、その構成上軽重の差異がないから、不可分的一体をなし、「ニツカエヌケー」なる称呼及び観念を生じ、(昭和三年七月九日大審院判決参照)これがまた商取引の一般であるのにかかわらず、審決が、原告の商標は、「ニツカ」の後に「エヌケー」の文字を添加したものであると認定したのは不当である。

(三)  また原告の商標中「ニツカ」の文字があつても、その構成上「エヌケー」の文字に比し、圧倒的重要価値がないから、仮りに「ニツカ」の文字が要部をなしてさえ、両者は類似するものとなすべきではない。(昭和四年十二月二十四日同判決参照)

(四)  しかのみならず、原告の前記商標中からは、特に氏名の略称、商品の品位、品質の表示上の記号として、普通に慣用せられる羅馬字NKを想起させるものではなく、仮りにこれを想起しても、一括して商品の標識たり得るから、「ニツカ」の文字の点に強く引かれ、これをその要部と認識されるようなことは、商品取引上あり得ないから、審決の認定は、商取引の実験則を曲解したか、看過したものである。

三、被告の答弁

被告指定代理人は、主文同旨の判決を求め、原告主張の請求の原因に対して、次のように答えた。

一、原告主張の請求原因一及び二の事実は、これを認める。

二、同三の主張はこれを否認する。

原告商標から一応「ニツカエヌケー」印の称呼が生ずることは、いうまでもないが、原告の商標中「ニツカ」の文字に附加された「エヌケー」の文字は、氏名の略称として、または商品の品位、品質等の表示記号として取引上普通に使用せられるNKの文字に相当するに過ぎないと、一般世人において容易に想起し、注意力は「ニツカ」に強く印象づけられて、その部分が要部と信ぜられるというべきで、両者の組合せは、不可分的一体をなしているとは判断すべきでない。従つて原告の商標は、単に「ニツカ」印とも称呼されると解するのが取引の実際に徴し、極めて自然であつて、審決の引用にかかる登録第二三九〇三五号商標とは、称呼及び観念上彼此まぎらわられる虞があるといわなければならない。

四、各証拠<省略>

三、理  由

一、原告主張の請求原因一及び二の事実は、当事者間に争がない。

二、原告の登録出願にかかる商標は、別紙記載のように、「ニツカエヌケー」の片仮名を同一書体で、同じ程度の大きさに、左から横書にして構成せられていることは、右に述べたように、当事者間に争のないところである。この商標から、原告の主張するように、「ニツカエヌケー」の称呼の生ずることは疑がない。しかしながら、「ニツカエヌケー」における「エヌケー」は、「ニツカ」をローマ字で書き表わした「NIKKA」の子音「NK」に該当するから、取引において人々は、右商標「ニツカエヌケー」について、「エヌケー」は、単なる同意語の繰り返えしとして、「ニツカ」の部分についてのみ、強い印象を受け、右商標を使用する商品を、「ニツカ」の呼び名によつて、指称し識別することも、決して予期し得ないことではない。して見れば、右原告の商標において「ニツカ」は、その要部をなすものと解するのを相当とする。

原告は、原告の商標は、前記のように、その構成から見ても、「ニツカエヌケー」の全体が、不可分的一体をなし、これを不可分的に称呼し、観念するのが、商取引の一般であると主張するが、その構成上これを不可分一体にのみ解さなければならないものとは認め難く、また商取引上不可分の一体としてのみ称呼し、観念されているとの事実は、これを認めるに足りる証拠はない。

三、一方審決が引用した登録第二三九〇三五号商標が、別紙記載のように、「日華」の文字を縦書にして構成されていることは、これまた先に述べたように、当事者間に争のないところである。右商標から「ニツカ」の称呼が生ずることは、疑を容れないところであるから、原告の商標は、右引用商標とその称呼を同一にし、両商標は、類似するものといわなければならない。

次いで、右両商標の指定商品が、全く同一であることは、前記当事者間に争のない事実から明白である。して見れば、審決が、商標法第二条第一項第九号を引用して、原告の商標は、登録することができないとしたのは、相当であつて、審決には、原告主張のような違法はない。

四、以上の理由により、原告の本訴請求は、その理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担について、民事訴訟法第八十九条を適用して、主文のように判決した。

(裁判官 小堀保 原増司 高井常太郎)

(別紙商標省略)

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